マンションリノベーションでは、限られた“箱”の中で、空間をいかに心地よく、豊かに使うかが鍵になります。なかでも、風が抜ける住まいを目指す方にとって、引き戸はとても重要な存在。今回は、マンションリノベにおける木製引き戸の魅力を、ポイントを押さえて丁寧にご紹介します。
マンションなのになぜ木製引戸?

マンションというと、気密性が高く、ドアや壁によって空間が明確に仕切られている印象があります。けれども、日々の暮らしの中で本当に求められるのは、必ずしも「閉じる」ことだけではありません。家族の気配を感じながら、風や光が穏やかに行き交う住まい――その心地よさを叶えてくれるのが引き戸です。さらに、自然素材である木を用いることで、素材の温もりが空間に奥行きを生み、無機質になりがちな室内にやわらかなぬくもりを添えてくれます。
マンションリノベにおける木製引戸の魅力

木製引き戸の魅力は、なんといっても「省スペースで開閉できること」と「木がもたらす温もり」にあります。開き戸のように扉の前にスペースを取らず、スライド動作で部屋同士をやわらかくつなぐことができます。また、木目の表情や質感が暮らしに自然のぬくもりを添え、穏やかな時間を演出します。さらに、格子やすりガラスと組み合わせれば、光を美しく透過させながらプライバシーを守ることもできます。
マンションリノベにおける木製引戸の種類
ひと口に「引戸」といっても、そのかたちは住まいの条件や設置場所によってさまざまです。ここでは、用途やスペースに応じて採用できる7つのタイプをご紹介します。
アウトセット引戸
壁の外側を滑らせて開閉する、最も一般的なタイプです。上部に取り付けたレールに沿って扉が動くため、扉を開けたときに扉を収納する袖壁の巾が必要です。
引き込み戸
引き戸を設けるには、扉を引き込むためのスペースが必要になります。そのため、スイッチやコンセントの位置、他の建具との干渉などによっては、設置が難しい場合もあります。
その点、「引き込み戸」であれば、開けたときに扉を壁の内部に収納できるため、こうした問題を解消できることもあります。扉を開け放すと壁の中にすっと収まり、空間がすっきりと見えるうえ、コンセントやスイッチを設けたい場所にも柔軟に対応できます。
アウトセット2枚重ね
隣接する出入口で十分な袖壁が確保できない場合に用いられます。2枚の扉がひとつの壁を挟む形で納まるので壁厚の設計に工夫が必要ですが、省スペースで納めることができます。
アウトセット+引き込み戸の組み合わせ
十分な袖壁が確保できない場合に、アウトセット引戸と引き込み戸を組み合わせることもあります。引き込戸が可能な空間とアウトセットでシンプルに設置する壁を共用する形です。
巨大片引戸
押入れの扉には押し入れ幅に合わせて設ける大型の片引戸もお勧めです。扉を全開できるため、布団や大きな荷物の出し入れがしやすくなります。ただし、サイズが大きすぎる場合は搬入経路の制約で設置できないこともあります。
上吊り引戸
天井から吊るタイプの引戸で、床に溝がないためバリアフリーに適しています。開閉音も静かで、床仕上げの途切れを防ぎ、部屋と部屋のつながりをなめらかにします。
Vレール+戸車
三枚引き戸など、上吊りタイプでは扉が揺れやすくなる場合があります。その際は、床に埋め込んだV字型のレール上を戸車が滑る仕組みを取り入れることで、開閉がスムーズになり、操作感も安定します。
まとめ
今回は、マンションリノベにおける木製引戸の魅力と設計の工夫をご紹介しました。限られた空間を有効に使いながら、温もりある表情で空間を彩る木製引戸。マンションリノベに関心のある方には、ぜひ取り入れていただきたい設えのひとつです。
