新築に比べて立地条件や価格の面で魅力の多い中古マンション。近年では、その可能性に惹かれ、リノベーションによって理想の暮らしを叶えようとする方が増えています。けれども、果たして内装を美しく整えるだけで、本当に快適な住まいが実現するのでしょうか。実は、その鍵を握るのが「断熱」。暮らしの質を根底から支える断熱の大切さについて、今回はマンションリノベーションの視点からしっかりと解説していきます。
マンションでの暮らしの悩み

中古マンションにお住まいの方からよく聞かれるのが、窓まわりや壁面に発生する結露や、それに伴うカビの悩みです。特に冬場は室内外の温度差が激しく、サッシや壁面に水滴が付着しやすくなります。見た目の美しさを損なうだけでなく、健康面にも影響するカビの発生は、暮らしの質を下げる一因に。これらの問題の多くは、住まいの「断熱性能」と密接に関係しているのです。
マンションリノベーションで「断熱」が大事なワケとは?

断熱とは、外気の温度を室内に伝えにくくするための工夫。戸建てに比べて外壁や窓が限られるマンションでは、気密性が高い反面、湿気や温度変化の影響を受けやすく、結果として快適性が損なわれることもあります。特に中古マンションは、築年数によっては断熱材がほとんど使われていないケースも少なくありません。リノベーションの際に断熱性能を見直すことで、暮らしの質は大きく変わります。
リノベーションで断熱を見直すと、こんなにうれしい効果が

断熱性の高い住まいは、一年を通して室内温度が安定し、エアコンなどの空調機器に頼りすぎずとも快適に過ごせるようになります。また、温度差が少ないため結露が発生しにくく、カビの予防にもつながります。さらに、断熱材の種類によっては吸音性にも優れ、内外の音の流出を抑える効果も期待できます。暮らしの心地よさと美しさを両立させるためには、断熱を見直すことがとても大切です。
マンションの断熱改修の種類

乾式断熱
乾式断熱は、発泡スチロールなどの板状断熱材を下地に組み込み、壁や天井に施工する方法です。メリットは、施工が比較的簡単で取り扱いやすく、幅広いマンションで導入できる点です。一方で、板材同士の間に隙間ができやすく、結露を起こす原因になるので、丁寧な施工が必要です。また角部屋など外気に接する面が多い場合は、施工面積が増え、コストアップにつながることも想定されます。
湿式断熱
湿式断熱は、発泡ウレタンなどを現場で吹き付けて断熱層を形成する方法です。複雑な形状の隙間にも施工しやすく、高い気密性と断熱性を確保できます。乾式に比べて工期はやや長くなりますが、断熱性能を最優先したい場合には最適な手法です。また、結露の原因となる空気の流入・流出を防ぐ効果も高いため、より高性能な住環境を目指すリノベーションに向いています。
中古マンションのリノベーションにおいて、「断熱」を意識することは、見た目の美しさだけではなく、暮らしの本質を快適で健やかにする大きな一歩です。目には見えにくい部分だからこそ、丁寧に向き合うことで、住まいの質や心地よさが確実に高まっていくでしょう。